2026年3月22日

【2026年改定】CPAP管理の新たな評価――算定の鍵を握る「施設基準」とCEの役割 その2

皆様、こんにちは。ブログ「四季草々」です。 前回の記事では、2026年(令和8年度)改定で新設された「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算(15点)」の概要をお伝えしました。
続きは、明日と書いておきながら、10日以上開けてしまいました(゚◇゚)ガーン

察してください(笑)


今回は、この15点を算定するために避けては通れない「施設基準要件」について、より具体的に掘り下げてみたいと思います。

1. 15点を算定するための「3つのハードル」

この加算は、どの医療機関でも自動的に付くわけではありません。以下の施設基準を満たし、地方厚生局に届け出る必要があります。

① 通信機能付き機器等によるデータ収集

まず、セルラー通信等の機能を備えたCPAP機器を使用していることが前提です。施設基準を読み解く限り、SDカードがNGと書いていないため、医療機関側がログデータを把握できる環境が求められます。

② 組織的なモニタリング体制の整備

「(CPAPの)データは見れるけれど誰も見ていない」では通らない、というのが今回の改定の肝だと思います。

  • 収集したデータを定期的に確認する体制。

  • 治療がうまくいっていない患者さん(使用時間が短い、リークが多い、AHIが下がらない等)を抽出し、速やかに医師や専門スタッフが介入できる仕組みが必要です。

③ 客観的な「治療実績」の維持(4割ルール)

ここが最も具体的なハードルになります。

  • 基準: CPAP療法の1日使用時間が4時間以上の日が20日以上ある「管理月数」の割合が、施設全体で4割以上であること。

つまり、「貸し出した患者さんの4割以上が、しっかり使えている状態」をキープしていなければなりません。

これ、どうやって計算するんだろう・・・
各メーカーとの打合せをしています。できばセルラー通信搭載CPAP治療装置は、各メーカのクラウドソフトの中で計算して欲しいです。
SDカード方式であっても、専用ソフトでログ解析をしていることから ソフト上で計算できるといいのですが・・・
R8年6月には間に合わないですよね・・・(´д`)

2. 臨床工学技士(CE)がこの加算の「心臓部」になる理由

この施設基準を読み解くと、まさに私たちCEの職能そのものが求められていることが分かります。

  • データの「番人」: 膨大な遠隔モニタリングデータの中から、マスクリークのパターンや無呼吸の残存を読み解き、医師に設定変更の提案を行う。

  • 技術的な「困りごと」の解決: 「鼻が痛い」「風が強くて眠れない」といった患者さんの不満に対し、マスクフィッティングの調整や加湿設定の最適化を行うことで、前述の「4時間・20日」の基準達成を直接的に支えます。

     

3. 今から準備すべきこと

2026年6月の施行に向け、施設として以下の準備を検討し始めるタイミングです。

  1. 機器のリプレイス計画: 現在貸し出している機器のうち、通信機能付きがどの程度あるか確認する。今のところ、SDカード方式がNGとなっていませんが・・・疑義解釈には気を付けましょう。

  2. 運用フローの作成: 誰がデータをチェックし、誰が患者に連絡するか。CEが主体となった「CPAP外来」のような仕組みの構築。CEの立場からは、このように記載しましたが、実運用では、看護師による「療養指導(170点)」の仕組みを検討することも必要かと思います。 

  3. 現在の「4割」の把握: 自施設の患者さんの現在のコンプライアンスを算出し、課題(なぜ使えていないのか)を分析する。

    これが、吐きそう案件です(´д`)

     

おわりに:15点の先にある「質」の向上

「たった15点のためにここまでやるのか」という声もあるかもしれません。しかし、この加算は「データに基づいた質の高い管理を、日本の標準にする」という国からのメッセージです。このちゃんと管理できている延長線上に「CPAP4ヶ月受診」が待っている可能性があります。



引用・参照元:

  • 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定資料「医療技術の適切な評価(腎代替療法・在宅医療等)」

  • 中央社会保険医療協議会:個別改定項目「在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)の充実管理加算の施設基準」

      

2026年3月10日

【2026年改定】CPAP管理の新たな評価――「15点」の加算が示すデータ活用の重要性 その1

皆様、こんにちは。
ブログ「四季草々」です。 3月に入り、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定の全容が明らかになってきました。今回は、多くの患者さんが利用されている「在宅陽圧呼吸療法(CPAP)」に関する、見逃せない変更点についてお話しします。

今回の改定では、在宅でのデバイス管理において、モニタリングを実施しているかが明確に問われるようになりました。

1. 「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算(15点)」の新設

今回の大きなトピックは、15点という新たな加算が設けられたことです。

  


  • 算定のポイント①:在宅陽圧呼吸療法指導管理料2の減算 (250→240点)

  • 算定のポイント②:患者さんの使用時間や治療データをモニタリングできる体制を整備している

  • 背景にあるもの: 「機械を貸しっぱなし」にするのではなく、データをちゃんと見なさい!!治療がうまくいっていない患者さんへ迅速にアプローチする体制を評価!!

2. 「15点」という重みと、求められる「質」

点数としては15点と控えめに見えるかもしれませんが、これは医療機関に対して「組織としてモニタリング体制を標準化せよ」という強いメッセージです。管理料2が減算になるので、充実体制加算15点があると少しだけ増点となります。その分、患者さんの支払も増えます。

  • 使用時間(コンプライアンス)の把握はもちろん、無呼吸指数の推移やリークの状況を把握し、必要に応じて設定変更やマスクの再調整を行う。

  • こうした「一歩踏み込んだ管理」を行っていることを、診療報酬という形で国が認めたことになります。

3. 臨床工学技士(CE)こそが、この加算の立役者

この「充実した管理体制」を構築・運用する上で、私たち臨床工学技士(CE)の存在は欠かせません。

  • データマネジメント: デバイスから届く膨大なログデータを整理・解析し、医師が効率的に判断できるようサポートする。

  • 技術的な療養指導: データの変化から「なぜ使えていないのか」の技術的な要因(設定圧、マスク、結露など)を読み解き、患者さんに具体的な解決策を提案する。

今回の改定は、CEが「機器の番人」から「データの活用を通じた治療のパートナー」へとステップアップすることを期待しているように感じます。(たぶん)

おわりに:機械を管理するから「治療を支える」へ

これまでの私たちの業務は、ともすれば「機器が動いているか」の確認に重きを置きがちでした。しかし、2026年の改定は、その先にある「患者さんの治療データをどう活かすか」に焦点を当てています。

15点の加算をきっかけに、施設全体でモニタリングの質を向上させ、患者さんにより良い眠りと安心を届ける。そんな体制づくりに、私たちCEが主導権を持って取り組んでいきたいですね。

とはいえ、この15点を取るのは簡単では、なさそうです。
続きは明日


引用・参照元:

  • 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定資料「在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」

  • 中央社会保険医療協議会:個別改定項目「在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)の充実管理加算」

2026年3月8日

【2026年改定】在宅高濃度酸素ハイフローセラピーが拓く「家で過ごす」という新しい選択肢

 2026年3月5日(木)に令和8年度の診療報酬改定の詳細がアップされました。今回の改定は、在宅療養を望む患者さんにとって、大きなインパクトを持つ内容が含まれています。

なかでも注目したいのが、新設された「在宅ハイフローセラピー指導管理料2」です。



1. 「2,400点」に込められた期待と重み

今回の改定で、在宅ハイフローセラピーの評価が二極化されました。

  • 従来の管理料(1): 2,400点。対象は、COPDの患者さん。

  • 新設の管理料(2): 2,400点という高い点数が設定された、重度患者さん向けの評価。

この点数の高さは、国が「重症であっても、適切な管理下であれば在宅復帰を強力に推進する」という意思表示と考えることができます。

2. 対象となるのは「FiO2 60%以上」の重症層

これまでは、高い酸素濃度を必要とする患者さんの在宅移行は、技術的・経済的、そして何より安全性の面で非常に高いハードルがありました。今回の「管理料2」の対象者は以下のように定義されています。

  • 間質性肺炎、ARDS、重症肺炎などの呼吸器疾患であること。

  • 入院中に適切な治療を行ってもなお、常時、吸入酸素濃度(FiO2)60%以上を必要とする重度の低酸素血症が持続していること。

  • 入院中に機器の導入が行われ、在宅での継続を希望されていること。

つまり、「低流量の酸素濃縮器では足りない、あるいは従来のHOT(在宅酸素療法)では維持が難しい」という方々に、道が開かれたのです。

3. 臨床工学技士(CE)として見逃せないポイント

この治療を在宅で行うには、機器の信頼性とご家族の理解が不可欠です。私たちCEの出番は、これまで以上に重要になります。

  • 導入時のトリアージ: 病院から在宅へ切り替える際、設定値が生活環境で維持できるか、回路の結露対策は万全かなど、技術的な視点での調整が欠かせません。医師をはじめ、多職種連携が求められます。FiO2 60%以上を在宅で維持するために、機器の流量を下げるのか?濃縮装置を大型化させるのか? 今の時点では、なんとも情報がありません。

  • 安全管理の徹底: FiO2 60%以上という高濃度酸素を扱うため、火気厳禁の指導はもちろん、停電時の対応についても事前相談が必要となります。

  • 遠隔モニタリングの活用?: 今回の改定ではICTの活用も評価されています。患者さんの使用状況をリアルタイムで把握し、トラブルを未然に防ぐ体制づくりが求められます。
    とはいえ、 酸素濃縮装置には遠隔モニタリングできる機種が増えていますが、HFNC専用器で通信搭載している機種って、、、未だ無い?

おわりに:「病院でしかできない」を過去にする

「こんなに酸素が必要なのに、家になんて帰れない……」 そんな風に諦めていた患者さんやご家族にとって、今回の改定は大きな希望の光です。

もちろん、管理のハードルは高いですが、私たち専門職がチーム一丸となってサポートすることで、「重症でも家で大切な時間を過ごす」という選択肢を当たり前にしていきたい。2026年のリスタートにあたり、改めてそう強く感じています。


引用・参照元: 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定資料「Ⅲ-1 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価-3 在宅ハイフローセラピー指導管理料の見直し」