2026年3月10日

【2026年改定】CPAP管理の新たな評価――「15点」の加算が示すデータ活用の重要性 その1

皆様、こんにちは。
ブログ「四季草々」です。 3月に入り、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定の全容が明らかになってきました。今回は、多くの患者さんが利用されている「在宅陽圧呼吸療法(CPAP)」に関する、見逃せない変更点についてお話しします。

今回の改定では、在宅でのデバイス管理において、モニタリングを実施しているかが明確に問われるようになりました。

1. 「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算(15点)」の新設

今回の大きなトピックは、15点という新たな加算が設けられたことです。

  


  • 算定のポイント①:在宅陽圧呼吸療法指導管理料2の減算 (250→240点)

  • 算定のポイント②:患者さんの使用時間や治療データをモニタリングできる体制を整備している

  • 背景にあるもの: 「機械を貸しっぱなし」にするのではなく、データをちゃんと見なさい!!治療がうまくいっていない患者さんへ迅速にアプローチする体制を評価!!

2. 「15点」という重みと、求められる「質」

点数としては15点と控えめに見えるかもしれませんが、これは医療機関に対して「組織としてモニタリング体制を標準化せよ」という強いメッセージです。管理料2が減算になるので、充実体制加算15点があると少しだけ増点となります。その分、患者さんの支払も増えます。

  • 使用時間(コンプライアンス)の把握はもちろん、無呼吸指数の推移やリークの状況を把握し、必要に応じて設定変更やマスクの再調整を行う。

  • こうした「一歩踏み込んだ管理」を行っていることを、診療報酬という形で国が認めたことになります。

3. 臨床工学技士(CE)こそが、この加算の立役者

この「充実した管理体制」を構築・運用する上で、私たち臨床工学技士(CE)の存在は欠かせません。

  • データマネジメント: デバイスから届く膨大なログデータを整理・解析し、医師が効率的に判断できるようサポートする。

  • 技術的な療養指導: データの変化から「なぜ使えていないのか」の技術的な要因(設定圧、マスク、結露など)を読み解き、患者さんに具体的な解決策を提案する。

今回の改定は、CEが「機器の番人」から「データの活用を通じた治療のパートナー」へとステップアップすることを期待しているように感じます。(たぶん)

おわりに:機械を管理するから「治療を支える」へ

これまでの私たちの業務は、ともすれば「機器が動いているか」の確認に重きを置きがちでした。しかし、2026年の改定は、その先にある「患者さんの治療データをどう活かすか」に焦点を当てています。

15点の加算をきっかけに、施設全体でモニタリングの質を向上させ、患者さんにより良い眠りと安心を届ける。そんな体制づくりに、私たちCEが主導権を持って取り組んでいきたいですね。

とはいえ、この15点を取るのは簡単では、なさそうです。
続きは明日


引用・参照元:

  • 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定資料「在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」

  • 中央社会保険医療協議会:個別改定項目「在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)の充実管理加算」

2026年3月8日

【2026年改定】在宅高濃度酸素ハイフローセラピーが拓く「家で過ごす」という新しい選択肢

 2026年3月5日(木)に令和8年度の診療報酬改定の詳細がアップされました。今回の改定は、在宅療養を望む患者さんにとって、大きなインパクトを持つ内容が含まれています。

なかでも注目したいのが、新設された「在宅ハイフローセラピー指導管理料2」です。



1. 「2,400点」に込められた期待と重み

今回の改定で、在宅ハイフローセラピーの評価が二極化されました。

  • 従来の管理料(1): 2,400点。対象は、COPDの患者さん。

  • 新設の管理料(2): 2,400点という高い点数が設定された、重度患者さん向けの評価。

この点数の高さは、国が「重症であっても、適切な管理下であれば在宅復帰を強力に推進する」という意思表示と考えることができます。

2. 対象となるのは「FiO2 60%以上」の重症層

これまでは、高い酸素濃度を必要とする患者さんの在宅移行は、技術的・経済的、そして何より安全性の面で非常に高いハードルがありました。今回の「管理料2」の対象者は以下のように定義されています。

  • 間質性肺炎、ARDS、重症肺炎などの呼吸器疾患であること。

  • 入院中に適切な治療を行ってもなお、常時、吸入酸素濃度(FiO2)60%以上を必要とする重度の低酸素血症が持続していること。

  • 入院中に機器の導入が行われ、在宅での継続を希望されていること。

つまり、「低流量の酸素濃縮器では足りない、あるいは従来のHOT(在宅酸素療法)では維持が難しい」という方々に、道が開かれたのです。

3. 臨床工学技士(CE)として見逃せないポイント

この治療を在宅で行うには、機器の信頼性とご家族の理解が不可欠です。私たちCEの出番は、これまで以上に重要になります。

  • 導入時のトリアージ: 病院から在宅へ切り替える際、設定値が生活環境で維持できるか、回路の結露対策は万全かなど、技術的な視点での調整が欠かせません。医師をはじめ、多職種連携が求められます。FiO2 60%以上を在宅で維持するために、機器の流量を下げるのか?濃縮装置を大型化させるのか? 今の時点では、なんとも情報がありません。

  • 安全管理の徹底: FiO2 60%以上という高濃度酸素を扱うため、火気厳禁の指導はもちろん、停電時の対応についても事前相談が必要となります。

  • 遠隔モニタリングの活用?: 今回の改定ではICTの活用も評価されています。患者さんの使用状況をリアルタイムで把握し、トラブルを未然に防ぐ体制づくりが求められます。
    とはいえ、 酸素濃縮装置には遠隔モニタリングできる機種が増えていますが、HFNC専用器で通信搭載している機種って、、、未だ無い?

おわりに:「病院でしかできない」を過去にする

「こんなに酸素が必要なのに、家になんて帰れない……」 そんな風に諦めていた患者さんやご家族にとって、今回の改定は大きな希望の光です。

もちろん、管理のハードルは高いですが、私たち専門職がチーム一丸となってサポートすることで、「重症でも家で大切な時間を過ごす」という選択肢を当たり前にしていきたい。2026年のリスタートにあたり、改めてそう強く感じています。


引用・参照元: 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定資料「Ⅲ-1 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価-3 在宅ハイフローセラピー指導管理料の見直し」


2026年3月2日

酸素と火気:知っておきたい「2メートルの安全距離」

こんにちは。
2月は更新のペースが落ちて、少しお休みをいただきましたが、3月に入り、春の訪れとともにブログを再始動します。今月からも、在宅療養に役立つ情報を週1回ペースでお届けしていきます。

本日のテーマは、在宅酸素療法(HOT)を安全に続けるために最も重要な「火気の取り扱い」についてです。

なぜ「火気厳禁」なのか?

意外と知られていないのですが、実は酸素そのものが燃えるわけではありません。酸素には「助燃性(じょねんせい)」といって、物の燃焼を激しく、強くする性質があります。

酸素を使用している環境で火を近づけると、普段なら小さな火種で済むものが、一気に大きな火柱となって衣服や髪の毛に燃え広がる危険があります。これが、在宅酸素において火気厳禁が強く叫ばれる最大の理由です。

守ってほしい「2メートルのルール」

厚生労働省や各機器メーカーの資料では、「火気から2メートル以上の距離を保つこと」が推奨されています。具体的には、日々の生活のこんなシーンで注意が必要です。

  • キッチンでの調理:

    • ガスコンロの使用中は特に注意が必要です。カニューレを装着したままコンロに顔を近づけるのは非常に危険です。

    • 「うちはIH(電磁調理器)だから大丈夫」と思われがちですが、調理中の鍋からの引火や、熱せられた油のリスクがあるため、やはり距離を保つことが大切です。

  • 暖房器具の使用:

    • 石油ストーブやガスファンヒーターなど、火が見える暖房器具からは必ず2メートル以上離れてください。

    • 電気ストーブも表面が高温になるため、同様の注意が必要です。

  • タバコ(喫煙):

    • 酸素使用中の喫煙は絶対に厳禁です。

    • 残念ながら、多くの火災事故の原因は「酸素を吸いながらの喫煙」によるものです。ご本人はもちろん、周囲の方も同じ室内での喫煙は控えていただく必要があります。

日常生活での「うっかり」を防ぐポイント

家の中で「2メートル」の距離感を常に保つのは意外と難しいものです。以下のポイントを意識してみてください。

  • チューブの長さを意識する:

    • 延長チューブを使っていると、無意識のうちに火の気に近づいてしまうことがあります。台所に立つ際や、家族がタバコを吸う場所の近くへ行く際は、特に意識しましょう。

  • 「火を使わない」工夫を取り入れる:

    • 冬場の暖房をエアコン中心にする、調理の際は酸素を一時的に外す(※主治医の指示に従ってください)など、環境そのものを安全に整えるのも一つの手です。

おわりに:正しく知って、安心して過ごす

「火が怖いから酸素を使いたくない」という不安を抱える方もいらっしゃいますが、ルールさえ守れば、酸素は皆様の生活を支える心強い味方です。

3月は暖かくなり、調理や外出の機会も増える時期です。今一度、ご自宅の火気の位置と、酸素の置き場所をチェックしてみてくださいね。




引用・参照元:

  • 厚生労働省:「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」

  • 総務省消防庁:「在宅酸素療法利用者による火災事故の防止について」

  • 一般社団法人 日本産業・医療ガス協会(JIMGA):在宅酸素療法時の安全について