2026年2月28日

地方のセミナー開催は「撤退戦」なのか――変化する学びの形と運営の苦悩

今日は朝から、役員を務めている某認定士会の総会とセミナーに参加してきました。総会に先立ち、役員間での事前打ち合わせも行われました。

新型コロナウイルス感染症の拡大は、医療業界における「学びの形」を一変させました。対面セミナーからオンラインへの移行が急速に進み、もしコロナ禍がなかったら、ここまで普及するのにあと何年かかったか分かりません。

一人の「受講者」として見れば、場所を選ばず学べる選択肢が増えたことは、大きな恩恵です。私自身もその便利さを日々実感しています。しかし一方で、「運営側」に回ると、この変化を手放しで喜ぶことはできません。

深刻な運営費の減少

最大の課題は、会の運営を支える収益構造の変化です。

私が携わっている認定士会のセミナーは、古くから地域に根ざした対面形式で開催されてきました。かつては一度に50名を超える参加者が集まることも珍しくありませんでした。

しかしコロナ禍以降、対面セミナーへの参加者は大幅に減少しました。これは単純な「外出控え」というより、全国どこからでも質の高いオンラインセミナーに参加できるようになったことで、地方の小規模な勉強会の優位性が薄れてしまったことも影響しているのでしょう。

参加者が減れば、当然ながら運営費も減少します。毎年の財務報告では、純資産が数十万円ずつ目減りしているのが現状です。利益を追求する組織ではないとはいえ、運営基盤そのものが揺らぐ事態は避けなければなりません。

「正解」を求めて、役員会で出された案

今日の理事会でも、この危機的な状況を打開するための活発な議論が行われました。

  • 開催時間の短縮: 1日開催を半日(午後のみ等)へ変更し、会場費や講師謝金を抑える。

  • ハイブリッド・オンライン化: 物理的な距離の壁をなくし、より広い範囲から参加者を募る。

  • コンテンツの差別化: 「対面でしかできない実技」や「地域の顔が見える繋がり」をどう打ち出すか。

地方で医療系セミナーを運営している団体は、おそらくどこも同じような「撤退戦」とも言える課題に直面しているのではないでしょうか。

会員の皆様に、何を届けられるか

変化の激しい時代において、何が唯一の正解なのかはまだ分かりません。

しかし、貴重な年会費を納めてくださっている会員の皆様に対し、この会に属していることのメリットをどう提供し、安心感を届けていくか。その一点を軸に、私たちは知恵を絞り続ける必要があります。

「地方の灯を消さない」だけでなく、時代に合わせた「新しい学びの場」へと進化させていきたい。そんなことを考えた一日でした。

2026年2月2日

【CE向け金銭学】機械には強いけど「お金」には少し疎い私たちが、2026年の賃上げについて知っておくべきこと

昔から、私のブログを読んで頂いている人からすると、最近、タイトルが過激だなぁ~と思われるかもしれません。今時のAIブームにのり、AIと壁打ちしながらブログを作成しています。といはいえ、AIの作成したブログ内容をそのままコピーしないように気を付けています。今回はタイトルは、そのまま貼り付けました(笑)

本題です。
臨床工学技士(CE)の皆さん、普段「自分の給与がどう決まるか」を意識していますか? 「毎日必死にアラーム対応や点検をしていれば、給料は後からついてくるはず……」 そう思っているうちに、世の中の賃上げラッシュに取り残されてはいないでしょうか。昨年のニュースで見た世間のボーナスと医療業界のボーナスの解離にガッカリした人も多いのではないでしょうか。2026年(令和8年度)、国の診療報酬改定という形で、私たちの手元に届く「お金」のルールが大きく変わります。

1. 国が掲げた「3.2%」という具体的な数字

2026年度の診療報酬改定。最も注目すべきは、私たちメディカルスタッフに対する「+3.2%」のベースアップ(賃上げ)という目標値です。前回の改定(2024年度)でも賃上げの仕組みはありましたが、今回はさらにその上を行く、過去最大級の引き上げが計画されています。上げられない医療機関も出てくる可能性もありますが・・・。

2. 「ベースアップ評価料」って何?

病院やクリニックの経営には、電気代や材料費など様々なお金がかかります。通常、診療報酬で点数が上がっても、それがスタッフの給料に回るかどうかは経営者の判断次第でした。

しかし、この「ベースアップ評価料」は違います。(

  • 用途が限定されている: この点数で得た利益は、必ずスタッフの賃上げに充てなければならないという「紐付き」のルールがあります。

  • 私たちのための点数: 私たちが現場で働き、その対価として得た点数が、そのまま私たちの給料を支える原資になるのです。

     

3. なぜ「ベースアップ」が凄いのか

「1万円のボーナス」と「1万円のベースアップ」は、価値が全く違います。 ベースアップ(基本給の底上げ)が起きると、以下のような「連鎖反応」が起きるからです。

  • 残業代が上がる: 基本給を元に計算されるため、同じ時間働いても手取りが増えます。

  • 賞与(ボーナス)が増える: 「基本給の〇ヶ月分」という計算の「基本給」が底上げされます。

  • 将来の年金が増える: 納める社会保険料が増えることで、将来の安心も少しだけ厚くなります。

月給30万円の人なら、月々約9,600円のアップ。年収に換算すると(ボーナス等を含め)、15万円〜20万円近くの差が出る可能性があります。

4. 私たちがすべきこと

「お金の話は苦手だから」と目をそらさず、まずは自院がこの「ベースアップ評価料」を算定しているか、興味を持つことから始めてみませんか。

臨床工学技士という専門職が正当に評価され、安心して長く働き続けるために。今回の改定は、機械のメンテナンスと同じくらい、私たちの人生にとっても大切な「メンテナンス」の機会なのです。


引用元:

  • 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定の基本方針(2025年12月決定)

  • 日本医師会:2026年度診療報酬改定に向けた提言


2026年1月30日

2026年改定の「光と影」3次医療圏の整理と臨床工学技士のゆくえ

 

はじめに:2026年、追い風の裏にあるもの

2026年度の診療報酬改定。私たち臨床工学技士(CE)にとっては、手術支援ロボットでの配置要件化や処遇改善など、一見すると「追い風」が吹いているように見えます。しかし、私のは、その評価の裏側に、国が描く「もう一つの冷徹なシナリオ」が透けて見えます。それは、「3次医療圏の解体と再編」です。クリニックに勤務している私が感じているくらいなので、総病院に勤務されているCEの方々の方が、現実を見ていると思います。

「集約化」という名のふるい

今回の改定で、ロボット手術に「常勤CEの配置」が義務付けられました。これはCEの価値を認めた結果ですが、裏を返せば「CEを常勤で雇えない、あるいは症例数の少ない病院は、高度医療から撤退しなさい」という通告でもあります。そもそもロボット手術は医療機関の支出が多いと分野と言われています。

高度な医療機器、そしてそれを扱う専門職を、限られた拠点に集める。これが国の狙う「選択と集中」です。人口が減り続ける日本において、すべての地域に同じレベルの3次救急を維持することは、もはや不可能だと国は判断していると思われます。

3次医療圏は「県」という枠を超える

現在、3次医療圏は原則として「都道府県」単位で設定されています。しかし、厚生労働省の検討会資料(新たな地域医療構想に関するまとめR6年12月18日)を読み解くと、その境界線を変更する話題がでています。
人口減少が著しい地域では、隣接する県同士を統合した「広域医療圏」への再編が、水面下で議論されています。

  • 高度急性期病院の拠点化: 数十万人の人口に対して1箇所に集約。

  • 県境の無効化: 患者の流動に合わせ、行政の枠を超えた効率的な配置。

県境を接する医療圏にお住まいの皆様は、すでにその予兆を感じているのではないでしょうか。病院の統合や、特定の診療科の集約は、決して他人事ではありません。


私たち臨床工学技士に何が起きるか

あまり考えたくない話なのですが、医療圏が整理されるということは、私たちの働き方も二極化することを意味します。以下に記載する二極化は私が勝手に名付けた名称です。

  1. 拠点病院のスペシャリスト: ECMOやロボット手術、ICU管理を極める「高度急性期」の担い手。

  2. 地域のネットワークマネージャー: 拠点から離れた場所で、在宅酸素(HOT)や人工呼吸(HMV)、遠隔モニタリングを駆使して患者さんの「日常」を守る担い手。

どちらが欠けても、地域の医療は成り立ちません。しかし、これまでのような「なんとなく急性期」という中途半端な立ち位置は、今後ますます維持しづらくなるでしょう。

おわりに:時代を読む「眼」を持つ

制度が変わる時、私たちはつい「点数がいくら上がったか」に目を奪われがちです。しかし、大切なのは「なぜ国はその点数を付けたのか」を考えることです。

3次医療圏の整理は、加速こそすれ、止まることはありません。 私たち臨床工学技士は、機械のメンテナンスだけでなく、自分たちの「立ち位置」のメンテナンスも、今から始めておく必要があるのではないでしょうか。