2026年3月29日

臨床工学技士が「必要」とされる場所——施設基準から読み解く私たちの価値

臨床工学技士が「必要」とされる場所——施設基準から読み解く私たちの価値
施設基準 解説

臨床工学技士が「必要」とされる場所
——診療報酬の施設基準から読み解く、私たちの価値

ちょっと大げさなタイトルをつけてみました。基本診療料・特掲診療料の施設基準をCEの視点でまとめました。

手術室・ICU 透析・血液浄化 医療機器安全管理

「うちの病院って、なんでCEがこの部署にいるんだろう?」——そう思ったことはありませんか?「なんでCEがいないんだろう?」と思っている施設はありますか?

実は、私たちCEが「配置されていなければいけない」場面は、診療報酬の施設基準にきっちり書かれています。今回はその中から、手術室・ICU・透析・医療機器安全管理に関係する部分を、現場目線でわかりやすく解説します。(私自身は、在宅医療に携わっていることから、将来、在宅に関係する施設基準にCEを入れてほしいです)

1.施設基準ってそもそも何?

診療報酬の「施設基準」とは、ある診療行為や管理料を算定(=保険請求)するために病院が満たさなければならない条件のことです。

たとえば「特定集中治療室管理料(ICU管理料)」を請求したいなら、人員・設備・体制についていくつもの基準をクリアして、地方厚生局に届け出る必要があります。CEの配置もその条件のひとつに含まれていることが多いのです。施設基準の届出等に臨床工学技士の名称が入っていることは、先輩達の努力のお陰です!!

💡 ポイント
CEが「施設基準に書かれている」ということは、私たちが診療報酬という国の制度の中で、正式に必要とされている職種だということ。単なる「あると便利」ではなく、いないと算定できない場面があるのです。

2.手術室・ICU系——"専従"と"専任"の違いに注意

手術室・集中治療領域の施設基準には、CEについて非常に具体的な要件が書かれています。特に重要なのが「専従」と「専任」の違いです。

🏥
専従(センジュウ)
その業務だけに従事すること。他の業務と兼務は原則NG。常勤が条件になることが多い。
🔧
専任(センニン)
その業務の担当者として指定されていること。他業務との兼務は認められる場合がある。
🏠
常時院内
勤務時間中は常に病院内にいること。オンコール対応では認められないケースも。

ICU(特定集中治療室管理料)

ICU管理料の中でも最も高い点数を算定できる「特定集中治療室管理料1」では、CEについてかなり厳しい要件があります。

🏥特定集中治療室管理料1 — CEへの要件
必須 救命救急入院料1または特定集中治療室管理料の届出病院での勤務経験が5年以上ある専従の常勤CEが、当該治療室内に1名以上配置されていること
必須 届出の際はCEの勤務計画表・勤務実績により配置状況が確認できる書類を添付すること
必須 医師またはCEにより、看護師を対象とした院内研修を年1回以上実施すること

ここで見えてくるのは、CEはICUにいるだけでなく、他職種の教育も担う存在として位置づけられているということです。

ハイケアユニット(HCU)

🏥ハイケアユニット入院医療管理料 — CEへの要件
必須 ICU/救命救急での勤務経験5年以上の専従の常勤CEが1名以上配置されていること
必須 専任のCEが、常時、院内に勤務していること

新生児特定集中治療室(NICU)

👶新生児特定集中治療室管理料 — CEへの要件
必須 常勤のCEが1名以上配置されており、緊急時には常時対応できる体制がとられていること

手術室系(体外式膜型人工肺・ECMO)

🫀体外式膜型人工肺管理料 — CEへの要件
必須 当該保険医療機関内に専任のCEが常時1名以上配置されていること
必須 届出の際はCEの勤務計画表(勤務実績)により配置状況が確認できる書類を添付すること

内視鏡手術用支援機器(ロボット手術)・各種高難度手術

腹腔鏡・胸腔鏡下手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)の施設基準では、対象術式ほぼすべてで「常勤のCEが1名以上配置されていること」が要件となっています。

🤖内視鏡手術用支援機器を用いる手術(共通要件)
必須 常勤のCEが1名以上配置されていること(胃・食道・大腸・肝・膵・腎・子宮・前立腺・胸部など多数の術式に共通)
必須 当該手術に用いる機器について、保守管理の計画を作成し、適切に保守管理がなされていること

弁置換術・弁形成術(胸腔鏡下)など体外循環を伴う心臓血管外科手術では、さらに厳しい要件があります。

❤️胸腔鏡下弁置換術・弁形成術等(心臓血管外科)
必須 常勤のCEが2名以上配置されており、そのうち1名以上は手術における体外循環の操作を30例以上実施した経験を有していること

手術室のCEは「機器管理だけ」ではない。
施設基準は私たちを、医療安全・教育・緊急対応を担う
「チームの核」として明確に位置づけている。

施設基準より読み取れること

3.透析・血液浄化系——名指しで求められるCE

透析・血液浄化領域でも、CEは施設基準の中で具体的に名指しされています。

LDLアフェレシス療法(LDL吸着)

🩸難治性高コレステロール血症に対するLDLアフェレシス療法
必須 臨床工学技士が1名以上配置されていること
必須 当該療法に用いる医療機器について、適切に保守管理がなされていること

血漿交換療法(移植後拒絶反応治療)

🩸移植後抗体関連型拒絶反応治療における血漿交換療法
必須 看護師及びCEがそれぞれ1名以上配置されていること

同種死体移植腎機械灌流保存

🫘同種死体移植腎機械灌流保存
必須 常勤のCEが2名以上配置されており、そのうち1名以上は体外循環の操作経験を有していること
必須 常勤のCEのうち1名以上が関係学会の所定の研修を修了していること

多血小板血漿処置(PRP)

💉多血小板血漿処置(PRP処置)
必須 常勤の薬剤師または臨床工学技士が1名以上配置されていること(薬剤師との選択的配置)

透析液安全管理(人工腎臓関連)

💧透析液安全管理
必須 透析液安全管理者として「専任の医師または専任の臨床工学技士」を選任し、職種及び氏名を届け出ること
💡 透析領域のCEへの期待
血液浄化系の施設基準で目立つのは、「機器の保守管理」と「技術的な専門性」の組み合わせへの期待です。体外循環経験や研修修了が求められるなど、資格を取って終わりではなく、継続的なスキルアップが前提になっています。

4.医療機器安全管理料——CEが主役になる唯一の加算

診療報酬の中で、CEが最も直接的な主役になっているのが「医療機器安全管理料」です。

⚙️医療機器安全管理料1の施設基準
必須(1) 医療機器安全管理に係る常勤のCEが1名以上配置されていること
必須(2) 医療安全管理部門を設置していること
届出書類 常勤のCEの氏名と勤務状況を証明する書類を添付すること

医療機器安全管理料1は、CEの氏名と勤務実績を添付書類として提出する数少ない加算のひとつです。つまり「CEが働いている証拠」を病院が行政に示すことで初めて算定できる——それがこの加算の本質です。

また、特掲診療料の施設基準では多くの手術・処置において「当該手術に用いる機器について保守管理の計画を作成し、適切に保守管理がなされていること」という要件が共通して設けられています。この保守管理の実務を担うのが、まさにCEです。

その他——機器管理責任者としてのCE

頭蓋内腫瘍摘出術(光線力学療法加算)の施設基準には、こんな一文があります。

🧠頭蓋内腫瘍摘出術(光線力学療法加算)
必須 研修プログラムを受講した機器管理責任者(医師または臨床工学技士)が選定されており、装置の保守管理の計画を作成し、適切に保守管理されていること

医師と同列に「機器管理責任者」として明記されている——これはCEという職種が医療機器のスペシャリストとして国から認められている証拠です。


5.一覧表でまとめてみた

これまでの内容を表にまとめます。

診療報酬・加算名 CEへの要件(要点) 区分
特定集中治療室管理料1(ICU) ICU/救命救急5年以上の専従・常勤CEが治療室内に1名以上 ICU
ハイケアユニット入院医療管理料 同上の専従・常勤CE1名以上+専任CEの常時院内勤務 ICU
新生児特定集中治療室管理料(NICU) 常勤CE1名以上・緊急時常時対応体制 ICU
体外式膜型人工肺管理料(ECMO) 専任CEの常時1名以上配置・勤務計画表を添付 手術
胸腔鏡下弁置換術・弁形成術等 常勤CE2名以上・うち1名は体外循環30例以上の経験 手術
内視鏡手術用支援機器を用いる各種手術(多数) 常勤CE1名以上・機器の保守管理計画の作成 手術
術後疼痛管理チーム加算 人工呼吸器等保守点検経験3年以上の専任CE・手術室等勤務経験3年以上 手術
LDLアフェレシス療法 CE1名以上配置・機器の保守管理 血液浄化
移植後血漿交換療法 看護師及びCEがそれぞれ1名以上配置 血液浄化
同種死体移植腎機械灌流保存 常勤CE2名以上・1名は体外循環経験・1名は学会研修修了 血液浄化
透析液安全管理 専任の医師または専任のCEを透析液安全管理者として選任 透析
医療機器安全管理料1 医療機器安全管理に係る常勤CE1名以上・氏名と勤務状況を届出書類に記載 機器安全
重症患者搬送加算 医師・看護師・CEで構成する重症患者搬送チームの設置 ICU
頭蓋内腫瘍摘出術(光線力学療法加算) 機器管理責任者(医師または臨床工学技士)の選定 機器安全

6.施設基準が教えてくれること

ここまで見てきた施設基準から、いくつかのことが浮かび上がってきます。

  • CEは「いると便利」ではなく「いないと算定できない」存在。施設基準を満たさないと、病院は診療報酬を受け取れません。
  • 求められるのは「配置」だけでなく「経験・研修・専門性」。ICUなら5年以上の経験、体外循環なら30例以上の実績、血液浄化なら学会研修の修了——単に資格を持っているだけでは不十分です。
  • 機器の保守管理は、CEの最重要ミッションとして国が認めている。多くの手術・処置の施設基準に「保守管理計画の作成」が条件として入っています。
  • チームの一員として他職種教育も担う。ICUの院内研修はCEも担当できると明記されています。
  • 賃上げ・待遇改善の対象職種として明記。調剤ベースアップ評価料の対象職種にCEが列挙されており、国が処遇改善を後押しする姿勢も読み取れます。

おわりに

診療報酬の施設基準は、難しい言葉が並んでいて読む気がしない——そう思っている方も多いかもしれません。でも、そこには「臨床工学技士という職種が、どこで、どんな役割を担うことを国が期待しているか」がはっきりと書かれています。

今の自分の仕事が「どの施設基準と関わっているか」を知るだけで、日々の業務の意味が少し変わってくるかもしれません。ぜひ一度、自施設の届出状況を確認してみてください。

※本記事は「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」および「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」をもとに作成しました。内容は通知の改定により変更となる場合があります。○○が抜けている、○○が間違っているなどがありましたら、コメント頂ければ幸いですm(_ _)m

出典:厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」

2026年3月28日

手押し車を「ねこ」と呼ぶのはなぜ?

手押し車を「ねこ」と呼ぶのはなぜ?
ことば・語源

手押し車を「ねこ」と呼ぶのはなぜ?
7つの説を探る

先日、妻を送迎する際に出た一言「ねこだ」。私は妻の実家のある秋田県の方言だと思っていました。ところが、XのCE界隈で手押し車を「ねこ」と呼ぶ声が多いことが判明。私は知りませんでした(゚◇゚)。建設現場で日常的に使われる一輪の手押し車。職人たちは当たり前のように「ねこ」と呼ぶけれど、なぜ猫なのか? 実は諸説あって、ひとつに絞れないのが面白いところです。お時間がある方はお付き合いください。

狭い足場(猫足場)を通れるから 有力説

建築現場では、猫が通れるような細い足場を「猫足場」と呼びます。一輪車はこの狭い通路を難なく通過できるため、「猫車(ねこぐるま)」と呼ばれるようになり、やがて「ねこ」に短縮されたという説。現場の実用性に根ざした、説得力のある語源です。

伏せた形が猫の背中に似ているから 有力説

手押し車を逆さに置くと、荷台の丸みが猫の背中のように見える——そんな形状からの命名説。観察眼の鋭い職人らしい発想で、現場でよく語られる有力な説のひとつです。

漆喰の「練子(ねりこ)」を運ぶ車だったから 傍証あり

壁材の漆喰を練ったものを「練子(ねりこ)」と呼び、それを運ぶ車が「ねりこ車」→「ねこ」と変化したとする語源説。左官職人の現場で生まれた言葉という流れが自然で、音の変化も無理がありません。

砂鉄・鉄鉱石を「ネコ」と呼んだ地域があるから 傍証あり

一部地域では砂鉄や鉄鉱石を「ネコ」と呼んでおり、それを運ぶ車が「ねこ車」と呼ばれたという説。地域限定の業界用語が全国に広まったケースとして興味深いですが、証拠は少なめです。

「猫が引くような小さな車」という比喩から 傍証あり

牛車・馬車と比べてとても小さいことから、「猫でも引けそうな車」という比喩的な呼び方が生まれたとする説。庶民的なユーモアが感じられますが、他の説ほど文献的な根拠は見当たりません。

押す姿勢が猫背に見えるから 傍証あり

手押し車を押すとき、人は自然と前傾になり猫背のような姿勢になります。その見た目から「ねこ」と呼ばれたという説。視覚的にはわかりやすいですが、道具の名前が使用者の姿勢から来るのは珍しく、傍証が少ないのが難点です。

車輪の音が猫の「ゴロゴロ」に似ているから 傍証あり

車輪がきしむ音が、猫の喉を鳴らす「ゴロゴロ」に似ているという音象徴説。7つの説のなかでは最もロマンチックですが、他の説と比べると根拠は薄め。「語感が面白い」という意味では記憶に残る説です。

定説はなく、複数の説が並立している

「ねこ」の語源はひとつに絞られておらず、今日もなお諸説が語り継がれています。そのなかで現場でよく挙げられる有力な2説がこちらです。

有力説 ①

猫足場(細い足場)を通れることから「猫車」→「ねこ」に

有力説 ②

逆さにすると荷台の丸みが猫の背中に見える形状から

職人言葉のなかには、語源がはっきりしないまま長く使われてきた言葉が多い。
「ねこ」もそのひとつかもしれません。

「1点=10円」が教えてくれること——新人臨床工学技士へ

「1点=10円」が教えてくれること——新人臨床工学技士へ
新人CEへ贈る言葉 | 2025年4月
「1点=10円」が教えてくれること
——医療の価値を数字で知る、新人臨床工学技士へ
診療報酬 新人向け 臨床工学技士|キャリア
4月。白衣やスクラブに袖を通し、初めての業務に向かう新人臨床工学技士(CE)のみなさんへ。
今日はいい歳になったオッサンCEから医療機関で勤務するうえで知っておいた方が良い診療報酬の基本ルールをお伝えします。「1点=10円」という、一見シンプルなこの言葉。でも、これを本当に理解しているスタッフは意外と少ないのです。
診療報酬の基本——「点数」ってなに?

日本の医療費は、「診療報酬制度」によって国が価格を定めています。医師の診察、処置、検査、そして私たちCEが関わる透析や人工呼吸器管理など——それぞれに「点数」が設定されています。

そしてその換算レートが、1点=10円。つまり「100点」の処置は「1,000円」の医療行為ということです。

1点
診療報酬の
1単位
10円
現金換算
(全国一律)
病院の収益
患者への医療の継続
CEの業務は、点数に直結している

「自分はただ機器を管理しているだけ」——そう思っていませんか? 実は違います。臨床工学技士が実施・関与する業務の多くは、診療報酬として加算される「点数」に関係しています。

CEの業務が関係する主な加算・点数の例。今回は話しを簡単にするため施設基準には触れません。診療報酬ではCEが施設基準に直接関係する項目が少ないんだ!!と意見があるCEのみなさん。今日のテーマは「新人CE」向けです。施設基準についは、後日改めて記載します(笑)

・人工腎臓(透析):1回あたり数百点〜
・人工呼吸器管理加算:毎日加算される
・心臓ペースメーカー指導管理料:定期的に算定
・内視鏡検査での機器管理:補助として貢献
・手術における体外循環業務:高点数の術式に関与  など

記録の漏れ、実施忘れ、指示との不一致——こうしたミスがあると、算定できる点数が「0点」になることもあります。1回の記録ミスが数千円、積み重なれば数万円以上のロスにつながるのです。

「1点の重み」を肌感覚で知る方法
  • 1 自分が関わる処置・業務に「何点ついているか」を一度調べてみる。施設の事務部門や先輩に聞くのも◎
  • 2 月に何件その処置を行っているか掛け算してみる。「月○万円の医療を支えている」という実感が湧く
  • 3 算定漏れが起きないよう、記録・確認のフローを意識して行う習慣をつける
  • 4 「点数があること」=「社会がその医療行為に価値を認めている」という見方を持つ

でも、点数がないケアにも意味がある

診療報酬に換算されない業務も、CEの仕事には多くあります。機器の点検、スタッフへの教育、環境整備……これらは点数に現れないけれど、医療の質と安全を守る根幹です。私が携わっている「在宅医療とCE」は、点数ありません(涙)

「点数=価値」ではなく、点数は価値の一部を見える形にしたもの。見えない仕事の積み重ねが、見える点数を支えています。

「1点=10円」を知ることは、医療経営の視点を持つことでもあります。病院が健全に運営され続けることで、患者さんへの医療が継続できる。CEとして働く一人ひとりが、その歯車の一つなのです。

新しいスタートを迎えたあなたへ。
技術と知識を磨くのと同じように、
「医療の経済」を知ることも、プロとしての大切な一歩。 1点の重さを胸に、臨床を歩んでください(^^)/