臨床工学技士が「必要」とされる場所
——診療報酬の施設基準から読み解く、私たちの価値
ちょっと大げさなタイトルをつけてみました。基本診療料・特掲診療料の施設基準をCEの視点でまとめました。
「うちの病院って、なんでCEがこの部署にいるんだろう?」——そう思ったことはありませんか?「なんでCEがいないんだろう?」と思っている施設はありますか?
実は、私たちCEが「配置されていなければいけない」場面は、診療報酬の施設基準にきっちり書かれています。今回はその中から、手術室・ICU・透析・医療機器安全管理に関係する部分を、現場目線でわかりやすく解説します。(私自身は、在宅医療に携わっていることから、将来、在宅に関係する施設基準にCEを入れてほしいです)
1.施設基準ってそもそも何?
診療報酬の「施設基準」とは、ある診療行為や管理料を算定(=保険請求)するために病院が満たさなければならない条件のことです。
たとえば「特定集中治療室管理料(ICU管理料)」を請求したいなら、人員・設備・体制についていくつもの基準をクリアして、地方厚生局に届け出る必要があります。CEの配置もその条件のひとつに含まれていることが多いのです。施設基準の届出等に臨床工学技士の名称が入っていることは、先輩達の努力のお陰です!!
2.手術室・ICU系——"専従"と"専任"の違いに注意
手術室・集中治療領域の施設基準には、CEについて非常に具体的な要件が書かれています。特に重要なのが「専従」と「専任」の違いです。
ICU(特定集中治療室管理料)
ICU管理料の中でも最も高い点数を算定できる「特定集中治療室管理料1」では、CEについてかなり厳しい要件があります。
ここで見えてくるのは、CEはICUにいるだけでなく、他職種の教育も担う存在として位置づけられているということです。
ハイケアユニット(HCU)
新生児特定集中治療室(NICU)
手術室系(体外式膜型人工肺・ECMO)
内視鏡手術用支援機器(ロボット手術)・各種高難度手術
腹腔鏡・胸腔鏡下手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)の施設基準では、対象術式ほぼすべてで「常勤のCEが1名以上配置されていること」が要件となっています。
弁置換術・弁形成術(胸腔鏡下)など体外循環を伴う心臓血管外科手術では、さらに厳しい要件があります。
手術室のCEは「機器管理だけ」ではない。
施設基準は私たちを、医療安全・教育・緊急対応を担う
「チームの核」として明確に位置づけている。
3.透析・血液浄化系——名指しで求められるCE
透析・血液浄化領域でも、CEは施設基準の中で具体的に名指しされています。
LDLアフェレシス療法(LDL吸着)
血漿交換療法(移植後拒絶反応治療)
同種死体移植腎機械灌流保存
多血小板血漿処置(PRP)
透析液安全管理(人工腎臓関連)
4.医療機器安全管理料——CEが主役になる唯一の加算
診療報酬の中で、CEが最も直接的な主役になっているのが「医療機器安全管理料」です。
医療機器安全管理料1は、CEの氏名と勤務実績を添付書類として提出する数少ない加算のひとつです。つまり「CEが働いている証拠」を病院が行政に示すことで初めて算定できる——それがこの加算の本質です。
また、特掲診療料の施設基準では多くの手術・処置において「当該手術に用いる機器について保守管理の計画を作成し、適切に保守管理がなされていること」という要件が共通して設けられています。この保守管理の実務を担うのが、まさにCEです。
その他——機器管理責任者としてのCE
頭蓋内腫瘍摘出術(光線力学療法加算)の施設基準には、こんな一文があります。
医師と同列に「機器管理責任者」として明記されている——これはCEという職種が医療機器のスペシャリストとして国から認められている証拠です。
5.一覧表でまとめてみた
これまでの内容を表にまとめます。
| 診療報酬・加算名 | CEへの要件(要点) | 区分 |
|---|---|---|
| 特定集中治療室管理料1(ICU) | ICU/救命救急5年以上の専従・常勤CEが治療室内に1名以上 | ICU |
| ハイケアユニット入院医療管理料 | 同上の専従・常勤CE1名以上+専任CEの常時院内勤務 | ICU |
| 新生児特定集中治療室管理料(NICU) | 常勤CE1名以上・緊急時常時対応体制 | ICU |
| 体外式膜型人工肺管理料(ECMO) | 専任CEの常時1名以上配置・勤務計画表を添付 | 手術 |
| 胸腔鏡下弁置換術・弁形成術等 | 常勤CE2名以上・うち1名は体外循環30例以上の経験 | 手術 |
| 内視鏡手術用支援機器を用いる各種手術(多数) | 常勤CE1名以上・機器の保守管理計画の作成 | 手術 |
| 術後疼痛管理チーム加算 | 人工呼吸器等保守点検経験3年以上の専任CE・手術室等勤務経験3年以上 | 手術 |
| LDLアフェレシス療法 | CE1名以上配置・機器の保守管理 | 血液浄化 |
| 移植後血漿交換療法 | 看護師及びCEがそれぞれ1名以上配置 | 血液浄化 |
| 同種死体移植腎機械灌流保存 | 常勤CE2名以上・1名は体外循環経験・1名は学会研修修了 | 血液浄化 |
| 透析液安全管理 | 専任の医師または専任のCEを透析液安全管理者として選任 | 透析 |
| 医療機器安全管理料1 | 医療機器安全管理に係る常勤CE1名以上・氏名と勤務状況を届出書類に記載 | 機器安全 |
| 重症患者搬送加算 | 医師・看護師・CEで構成する重症患者搬送チームの設置 | ICU |
| 頭蓋内腫瘍摘出術(光線力学療法加算) | 機器管理責任者(医師または臨床工学技士)の選定 | 機器安全 |
6.施設基準が教えてくれること
ここまで見てきた施設基準から、いくつかのことが浮かび上がってきます。
- CEは「いると便利」ではなく「いないと算定できない」存在。施設基準を満たさないと、病院は診療報酬を受け取れません。
- 求められるのは「配置」だけでなく「経験・研修・専門性」。ICUなら5年以上の経験、体外循環なら30例以上の実績、血液浄化なら学会研修の修了——単に資格を持っているだけでは不十分です。
- 機器の保守管理は、CEの最重要ミッションとして国が認めている。多くの手術・処置の施設基準に「保守管理計画の作成」が条件として入っています。
- チームの一員として他職種教育も担う。ICUの院内研修はCEも担当できると明記されています。
- 賃上げ・待遇改善の対象職種として明記。調剤ベースアップ評価料の対象職種にCEが列挙されており、国が処遇改善を後押しする姿勢も読み取れます。
おわりに
診療報酬の施設基準は、難しい言葉が並んでいて読む気がしない——そう思っている方も多いかもしれません。でも、そこには「臨床工学技士という職種が、どこで、どんな役割を担うことを国が期待しているか」がはっきりと書かれています。
今の自分の仕事が「どの施設基準と関わっているか」を知るだけで、日々の業務の意味が少し変わってくるかもしれません。ぜひ一度、自施設の届出状況を確認してみてください。
※本記事は「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」および「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」をもとに作成しました。内容は通知の改定により変更となる場合があります。○○が抜けている、○○が間違っているなどがありましたら、コメント頂ければ幸いですm(_ _)m