2020年4月6日月曜日

私見です。在宅人工呼吸療法における「感染対策」について


新型コロナウイルスに関する多くの情報が出ています。医療機関内での感染対策や一般的なうがい・手洗いの情報が多い印象です。国内には、在宅人工呼吸療法をされている方が多くおり、新型コロナウイルスに関連した「在宅医療」の情報が不足していると感じています。

今後、在宅医療での感染対策について関連団体や学会等から「ガイド」や「〇〇対策」がでると予想されます。出たら直ぐにご紹介します。
と同時に、私のブログが紛らわしい情報にならないように必要に応じて削除します。
在宅医療は個々の事情が複雑過ぎて細かなアドバイスを書くことができません。
以下に記載することは「私見」です。(ご意見・ご要望はお手柔らかに。)

参考にしたガイドライン等は引用先を示します。


 1.在宅人工呼吸療法について

①国内の推定患者数(2018年社会医療診療医行為別統計)
TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器) 6285
NPPV(マスク式人工呼吸器)        19959
CPAP(睡眠時無呼吸症候群の方が使用する呼吸器) 446514


②在宅医療で3密を避けることは難しい
既に複数の医療・介護系施設で職員や利用者への新型コロナウイルスへの感染が発生しています。在宅医療の医療・介護では密閉・密集・密接のいわゆる「3密」を避けるのが難しい状況です。患者宅へ訪問するスタッフは、自分たちが感染源にならないように細心の注意を払っています。それでも、双方が感染源になってしまう可能性があります。

③在宅人工呼吸療法の問題はエアロゾル
日本エアロゾル学会によると「空気中に微小な液体または固体の粒子として、ある程度安定に存在している系(状態)は、すべてエアロゾル」というそうです。



在宅人工呼吸療法を行っている患者さん本人が新型コロナウイルスに感染した場合、エアロゾルが発生します。そのため、本人が無症状であった場合でも、看病をする家族が感染することで入院を余儀なくされる可能性があります。


④現時点における在宅医療に感染対策に対する基本的な考え方
TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器) や24時間 のNPPV(マスク式人工呼吸器) で療養されている方の多くが、外出頻度は低いと予想されることから
日本環境感染学会 から出ている

こちらがとても参考になります。

CPAP(睡眠時無呼吸症候群の方が使用する呼吸器)をされている方は、日中はお仕事等をされている方が多くいると思います。通常の感染対策とエアロゾル対策としてご家族と寝室を分けることを提案します。


2.在宅人工呼吸療法と新型コロナウイルス

①在宅人工呼吸療法はエアロゾルが発生します
ここで書く、在宅人工呼吸療法はNPPV(マスク式人工呼吸器)、TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器)、ASV(心不全の方で使用する呼吸器)、CPAP(睡眠時無呼吸症候群の方が使用する呼吸器)を含めます。
在宅人工呼吸療法では、エアロゾルが発生する状況です。本人が新型コロナウイルスに感染した場合、療養している居室内にエアロゾルにより大量のウイルスが浮遊すると推測されます。この浮遊している新型コロナウイルスが何時間「生きているのか」が分かりません。市販されている空気清浄機でどの程度の効果が得られるか未知数です。多くの空気清浄機でウイルス除去のデータはありますが、実験データは新型コロナウイルスではないということにご注意下さい。

②病院で人工呼吸器を使用している人への対応
参考までに現在、病院内で実施されている対応を抜粋します。

日本呼吸療法医学会と日本臨床工学技士会から出ている
ー医療機器を介した感染を防止する観点からーVer.1.0 2020/3/27

「人工呼吸器等を介した感染を防止する観点から、関連する医療機器等の取扱いにおける注意事項をまとめたものです。」



③在宅ではどんな対策があるか
「新型コロナウイルス肺炎患者に使用する人工呼吸器等の取り扱いについて」の全てを、在宅人工呼吸療法へ適応させることは難しいです。

適応が難しい理由
・人が異なる。在宅は、本人と家族を中心にして、
 援助者(かかりつけ医、訪問看護等)がいます。

・環境が異なる。病院と在宅では、環境が異なります。

・機材が異なる。院内で使用される人工呼吸器と在宅向けに使用される
 人工呼吸器は違います。
 集中治療室で使用されるガス配管を使用する人工呼吸器は、在宅では使用できません。 一方、在宅で使用される呼吸器は、集中治療室で治療が必要な肺炎の方には使用できま せん。(出来なくはないが、性能が足りません。海外の集中治療室では人工呼吸器が足 りずに、在宅向けの人工呼吸器も使用しているようです。

・材料が異なる。
 現在医療機関では標準予防策の徹底がされています。この新型コロナウイルス感染症の 確定例および疑い例に対しては飛沫予防対策と接触予防対策を追加すること。飛沫予防 対策と接触予防対策については、通常は、眼・鼻・口を覆う個人防護具として、アイ  シールド付きサージカルマスク、あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールド  /フェイスガードの組み合わせ、キャップ、ガウン、手袋を装着する。・大量のエアロゾ ルが発生する状況においては、N95マスクを追加する。・個人防護具の着用時および脱衣 時は、眼・鼻・口の粘膜に触れないように注意し、適切なタイミングで手指衛生を実施 するとされています。

 在宅医療では、このような医療材料を展開することは困難です。


以上のことを踏まえて


④今、考えられる事(2020/4/5

a)積極的に居室の換気を行う
発生するエアロゾルへの対応としては積極的な「換気」を提案します。
夜間寝ている時の換気はどうするのか?
エアコンの換気では不十分なのか?夏は窓を開けられない!
色々なご意見が出るところかと思います。

先に記載したように「在宅医療は個々の事情が複雑過ぎて細かなアドバイスを書くことができません。」

居室内の空気の流れを考えて頂き、室外へ出るようにサーキュレーターや扇風機を使用するのが良いと考えています。

b)一緒に寝る方は、リークポートや呼気弁から距離をあける
NPPV(マスク式人工呼吸器)、TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器)、ASV(心不全の方で使用する呼吸器)を使用している場合には、寝室内でご家族と一緒に寝ることが多いと思われます。
マスクのリークポートや呼吸器回路の呼気弁からは、本人の肺の中にあった空気が出てきます。
一緒に寝る方は、人工呼吸器回路のリークポートや呼気弁から距離をあけることをお薦めします。

就寝時に家族がマスクをつけて寝ることが、どの程度「予防策」になるか分かりません。
今後の学会等からの「ガイド」や「〇〇対策」を待ちたいと思います。

c)バクテリアフィルター付きの人工鼻
TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器)の場合で、かつ加温加湿器を使用していない場合には漠照りフィルター付きの人工鼻が選択肢にあげることができます。
通常の人工鼻と異なり、バクテリアフィルターが付き人工鼻は大きくなります。呼気に含まれる新型コロナウイルスをバクテリアフィルターで除去できる可能性があります。
とはいえ、人工鼻加算は1500点しかなく、バクテリアフィルター付き人工鼻を11個で交換するには「加算」の中で収まりません。医療機関側の持ち出し(赤字)か患者自己負担(実費)にせざるを得ません。

d)閉鎖式吸引チューブ
TPPV(気管切開をして使用する人工呼吸器)の場合で、吸引チューブを特殊な物に変更する方法があります。「方法」としてはありますが、手技の習熟をどのように実施するか、物品コストをどうするか?が問題なり、在宅医療の現場では使用が難しいと考えています。

e)人工呼吸器等の消毒
アルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤含有のクロスでの清拭消毒。

f)ネブライザーは換気を行いながら
人工呼吸器と同様にネブライザーもエアロゾルを発生させます。ネブライザーを必要な場合には、換気を行いながら実施して下さい。

現時点で、発生するエアロゾルを解決する万能な方法を提案できません。
万能な方法がありません。
解決案をお持ちの方、ご意見・情報をお待ちしております

本人の体調不良が新型コロナウイルスに感染であった場合、確定診断までの間はエアロゾルにより家族が新型コロナウイルス感染する可能性があります。もしくは、家族が新型コロナウイルスに感染している場合には、本人に感染させてしまう可能性があります。


以上。


今後、連団体や学会等から「ガイド」や「〇〇対策」がでると予想されます。
出たら直ぐにご紹介します。
と同時に、私のブログが紛らわしい情報にならないように必要に応じて削除します。

後日追記が必要な場合には、日付を入れて追記します。
願わくは、「ガイド」や「〇〇対策」が出て周知されますように!



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