はじめに:2026年、追い風の裏にあるもの
2026年度の診療報酬改定。私たち臨床工学技士(CE)にとっては、手術支援ロボットでの配置要件化や処遇改善など、一見すると「追い風」が吹いているように見えます。しかし、私のは、その評価の裏側に、国が描く「もう一つの冷徹なシナリオ」が透けて見えます。それは、「3次医療圏の解体と再編」です。クリニックに勤務している私が感じているくらいなので、総病院に勤務されているCEの方々の方が、現実を見ていると思います。
「集約化」という名のふるい
今回の改定で、ロボット手術に「常勤CEの配置」が義務付けられました。これはCEの価値を認めた結果ですが、裏を返せば「CEを常勤で雇えない、あるいは症例数の少ない病院は、高度医療から撤退しなさい」という通告でもあります。そもそもロボット手術は医療機関の支出が多いと分野と言われています。
高度な医療機器、そしてそれを扱う専門職を、限られた拠点に集める。これが国の狙う「選択と集中」です。人口が減り続ける日本において、すべての地域に同じレベルの3次救急を維持することは、もはや不可能だと国は判断していると思われます。
3次医療圏は「県」という枠を超える
現在、3次医療圏は原則として「都道府県」単位で設定されています。しかし、厚生労働省の検討会資料(新たな地域医療構想に関するまとめR6年12月18日)を読み解くと、その境界線を変更する話題がでています。
人口減少が著しい地域では、隣接する県同士を統合した「広域医療圏」への再編が、水面下で議論されています。
高度急性期病院の拠点化: 数十万人の人口に対して1箇所に集約。
県境の無効化: 患者の流動に合わせ、行政の枠を超えた効率的な配置。
県境を接する医療圏にお住まいの皆様は、すでにその予兆を感じているのではないでしょうか。病院の統合や、特定の診療科の集約は、決して他人事ではありません。
私たち臨床工学技士に何が起きるか
あまり考えたくない話なのですが、医療圏が整理されるということは、私たちの働き方も二極化することを意味します。以下に記載する二極化は私が勝手に名付けた名称です。
拠点病院のスペシャリスト: ECMOやロボット手術、ICU管理を極める「高度急性期」の担い手。
地域のネットワークマネージャー: 拠点から離れた場所で、在宅酸素(HOT)や人工呼吸(HMV)、遠隔モニタリングを駆使して患者さんの「日常」を守る担い手。
どちらが欠けても、地域の医療は成り立ちません。しかし、これまでのような「なんとなく急性期」という中途半端な立ち位置は、今後ますます維持しづらくなるでしょう。
おわりに:時代を読む「眼」を持つ
制度が変わる時、私たちはつい「点数がいくら上がったか」に目を奪われがちです。しかし、大切なのは「なぜ国はその点数を付けたのか」を考えることです。
3次医療圏の整理は、加速こそすれ、止まることはありません。 私たち臨床工学技士は、機械のメンテナンスだけでなく、自分たちの「立ち位置」のメンテナンスも、今から始めておく必要があるのではないでしょうか。
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